贈り物とビジネス文化:法的リスクとの境界線をどこに引くか
ベトナムにおいて、祝祭日や旧正月(テト)、記念日などの機会に、お世話になった人へ贈り物をしたり、感謝の気持ちを伝えたりすることは、比較的よく見られる行為です。しかし現行法の観点から見ると、行政機関の職員や公務員に対する贈答行為は、常に法的リスクを内包しており、一定の状況では刑事責任が問われる可能性もあります。
01 - 問題は「贈り物」ではなく「目的」
ベトナム刑法上、贈賄罪・収賄罪は、受領者が職務上の権限を持つ者であること、金銭や利益を受け取ること、その目的が贈与者の利益のためであること、違法性を双方が認識していることの要件が満たされる場合に成立します。
02 - 現行のベトナム反腐敗法における贈答品管理および利益相反の規制
2019年8月15日以降、2018年反腐敗防止法及び2025年12月10日付法律第132/2025/QH15号(2026年7月1日施行)並びに政令第59/2019/NĐ-CP号等に基づいて運用されています。最も重要な変更点は、贈答品の価値に関する基準(旧制度の50万ベトナムドン基準)が廃止されたことです。
03 - 法と人情のあいだ
ある日本企業の事例:会社設立完了後、社長が当局担当職員へ高価ではない地元の菓子とお守り、90歳を超える母親が手刺繍した布袋を贈った。重要なのは「贈り物それ自体が違法なのではなく、利益・期待と結びついた贈り物がリスクとなる」という点です。
04 - テトの贈答が負担になるとき
近年、贈答の慣習は贈る側・受け取る側双方にとって負担になりつつあります。
05 - 企業贈答品に関する会計処理におけるリスク管理とコンプライアンス上の課題
電子インボイス制度の厳格化により、仕入インボイス管理、在庫・物流管理、売上インボイス発行(顧客への贈答品でもVAT申告が必要)など複雑な証憑管理体制の整備が必要です。
実務家からのメッセージ:この贈り物に何かの期待は含まれていないか、判断に影響を与える意図はないか、受け取る側に職務上の義務に反する行為を求めていないか。これらに明確に「いいえ」と言えるなら、それは人と人との関係を大切にする行為と言えます。