ベトナム化粧品PIF(製品情報ファイル)義務と回収リスク 最新事例から見る実務対応ポイント
ベトナムにおける化粧品規制では、PIF(製品情報ファイル)の整備・保存・提示義務が厳格に求められている。近時の行政処分および製品回収事例をもとに、PIF未備えの法的リスク、回収命令への対応、流通管理体制の構築ポイントを解説する。 弁護士法人NEXORA(NEXORA LAW FIRM)は、日系企業を中心に、化粧品コンプライアンス、行政対応、回収実務について実務的かつ現場に即したサポートを提供している。
01 - 近年、化粧品分野で強化される「PIF(製品情報ファイル)」の監視
近年、ベトナム保健省は化粧品の製造・流通に関する事後監視(後検査)を強化しており、その中心となっているのが、化粧品管理規定で義務化されている製品情報ファイル(Product Information File – PIF)の整備・保存状況です。
2025年11月5日、医薬品管理局は、Japan Connection Investment & Trading Co., Ltd.(以下「Japan Connection」)に対し、
PIF を備えていない、または提示できなかった化粧品を販売したこと
違反製品の回収および廃棄を命じること
を内容とする行政処分決定(No. 654/QĐ-XPHC)を発出しました。
特に注目されるのは、回収対象となった製品の多くが、ベトナム消費者にとって非常に馴染みのあるブランドであった点です。(例:Hatomugi、Pantene、Bigen Cream など。いずれも Japan Connection 名義で届出されたもの。)
医薬品管理局が公表した資料によれば、回収・廃棄を命じられた化粧品は次の9製品です。

12月3日時点で、Japan Connection社は処分決定の履行状況について報告書を提出しました。しかし同社によれば、当該処分決定が医薬品管理局(DAV)のポータルサイトで公表されて以降、顧客からの苦情や製品返品の申し出は一切なく、その結果、「回収・廃棄すべき製品が残っていない」と説明しています。
これに対し、処理が適切かつ十分に実施されるよう、医薬品管理局は各省・中央直轄市の保健局に対し、次の内容を通知しました。すなわち、管内の化粧品販売・使用事業者へ、上記9製品の流通を直ちに停止させるとともに、在庫が残っている場合は Japan Connection 社へ返品させること。各保健局は、事業者の回収実施状況を点検・監督し、なおも販売を継続している事例があれば、法令に基づき厳正に対処する責任を負います。
併せて、医薬品管理局は Japan Connection 社に対し、流通ネットワーク全体へ回収通知を発出し、返品製品の受領、回収および廃棄を適正手続に従って実施するよう指示しました。企業はこの一連のプロセスについて全面的な責任を負い、証拠資料を添付した追加報告書を 2026年1月5日までに医薬品管理局へ提出しなければなりません。
なお、ハノイ市保健局は、Japan Connection 社による回収・廃棄の実施状況を継続的にフォローし、監督・確認の上、2026年1月10日までに結果を医薬品管理局へ報告するよう指示されています。
02 - 化粧品PIF義務と回収リスク:企業が今すぐ見直すべき実務ポイント
上記事案から、ベトナムで化粧品事業を行う企業にとって、次のような重要な留意点が導き出されます。
PIF(製品情報ファイル)は、企業の法的義務であり、製品申告者の責任そのものです。
企業は、PIF を作成・保存するだけでなく、権限当局による検査・監査の際に、迅速かつ完全な形で提示できる体制を整えておく必要があります。これは、化粧品の「受理番号」がすでに付与されているかどうかに関係しません。
在庫が残っていないことは、回収・廃棄義務の終了を意味しません。製品が販売代理店、小売店、流通業者等のネットワークを通じて市場に残っている場合、回収の最終責任は、申告者である企業にあり、行政機関の監督対象となります。
企業は、契約管理、流通管理、ロット追跡、回収手順などを含む、実効性のある流通チェーン管理体制を構築・運用すべきです。これにより、行政当局から是正措置が求められた場合でも、迅速かつ適切に対応できます。
流通事業者・販売事業者についても、法令遵守の意識向上が不可欠です。取扱製品の法的ステータスを常に確認し、回収対象製品の継続販売による連帯責任リスクを未然に防ぐ必要があります。
総じて、行政当局による事後規制が強化されるなか、法務書類の点検、コンプライアンス体制の整備、リスク管理の高度化は、制裁回避のためだけでなく、企業活動を安定的・透明性高く・持続的に運営するうえで欠かせない要素です。